クルマ好きへの一歩

7六歩

前回「遅く目覚めたクルマ好き」から続く

社会人となって買った新車。そのクルマは、まだクルマ好きではなかった自分が、一般消費者としての観点で選んだクルマであり、半年ほど乗り続けて、何となくツマラナさを感じ始めていたことまで書いた。

この時点では、まだ茫洋としたクルマへの関心の始まりではあったが、そう感じ始めるには他にも要因があったように思っている。一つは、大してこだわりもなく買った新車ではあったが、新車である以上、洗車やメンテナンスなど、クルマを良い状態で維持することへの興味が湧いたということ。その際に、ディーラー任せというよりは、自分でもある程度は「できる・わかる」ようにしておきたい、という思いがあったことである。クルマについての知識を蓄えることに目覚めていった。

そして、もう一つは大きな要因だが、現代とは違い、周囲にクルマ好きが溢れていたことである。例えば、稼ぐお金の大半をクルマに注ぎ込むような人間が一定数いたし、そうでなくとも、クルマ好きと呼ぶに相応しい人間が、数多く身近に存在していた。当時の私の仕事関係の駐車場にも、シルビア、インテグラ、MR2、プレリュード、セリカ、GTO、レビン、トレノといったクルマたちが並び、住んでいたアパートの駐車場にも、スカイラインGT-R(R32)、RX-7(FC3S)、180SXなどが並んでいた。中でもバケットシートにロールケージでスパルタンに彩られたRX-7のオーナーは頻繁にジャッキアップをしてクルマ弄りに熱中する様子が見られたが、当時としては別段珍しくもない光景で、隣のアパートの駐車場を見れば、そこでも同じような作業が進行中というのが、日常の一コマであった。

彼らの中には、週末の夜になると自慢の愛車を持ち出し、山奥の峠で競い合う者もあれば、街中の通称ナンパ通りに繰り出す者もあったりと、何はともあれクルマを取り巻く過剰な熱量を感じる時代であった。私自身は、そのどちらの世界にも接近する気はなかったが、気の合う連中とはクルマについて話すような機会も次第に多くなっていったのである。

そんな時、手に取ることになったのが、故・徳大寺有恒氏による話題の書『間違いだらけのクルマ選び』である。これを読むことで、私のクルマへの認識は大きく変わり始めることになる。趣味性という観点が芽生えたこともそうだが、同時に実用性や機能性に基づいた見方も「実はこういうことなのか」と転回し始めていく。

さらに、徳大寺氏がよく登場していた『NAVI』(二玄社)という自動車雑誌を購読し始めたのもその頃だ。自動車雑誌も多種多様ではあったが、当時目立った改造・ドラテク・パーツ情報系の雑誌とは一味も二味も違う『NAVI』が好みだった。同じく二玄社からは『CAR GRAPHIC』という格調高い雑誌も出ていたが、こちらは少々自分の身の丈に合わない感じもして、時々見るくらいだった。

テレビでは、三本和彦氏の率直すぎる見解が愉快な『新車情報』(TVK)をほぼ欠かさず観るようになった。三本氏の視点は、趣味性・道楽性というよりは、クルマの本来性とでもいうべき見地にあって、自動車メーカーと消費者との関係性に始まり、クルマ作りのあり方を考えさせるものであった。より趣味的な観点から発信されるものとしては『カーグラフィックTV』(テレビ朝日)も楽しむようになった。

そんなこんなで、気付いた時にはクルマへの興味がはち切れんばかりに肥大化していた。そうなると、その時所有していたていたクルマ、あまり考えることなく買ったクルマが疎ましく感じられて仕方がない。いや、そのクルマのせいではなく、そういうクルマを選んでしまったことを悔やんでいた。早く乗り替えたい思いは日に日に募るばかりだった。

新・間違いだらけの外国車選び
当時の本・雑誌のほとんどは処分してしまい、今も手元に残っているものは僅か。
「〜クルマ選び」ではなく「〜外国車選び」が残っていた。

4件のコメント

  1. 確かに昔話…と言うよりも、違う国の話を見聞きしているような感覚になりました。実際稼ぎの大半をクルマに…とか休みの日は何かとジャッキアップ…とか、見かけませんものねぇ。

    1. 駐車場に並ぶクルマもすっかり変わりましたね。ジャッキアップなんかしてたら通報される時代ですよ(嘘)

      当時の彼らは今どういうカーライフを送っているのでしょうか。

        1. 「若い頃はクルマにお金注ぎ込んだり、峠を攻めたりと、やんちゃしてまして」と言う、ファミリーカー乗りな方々に遭遇することがありました。落ち着かれてる方も少なくないんでしょうね。

          クルマに熱中するのは若者の通過儀礼みたいな側面もありましたから、みんながみんなエンスーと称されるような生涯ヘンタイ路線にはシフトしなかったのでしょう。歳取っても凝り続けるとタチが悪いのはクルマ遊びも他の遊びも同じかと(笑)

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