私が、いかにもクルマ好きらしい楽しみ方をしていたのは、おそらくロードスターに乗っていた頃になるだろう。もう20年以上も前のことである。可処分所得の一定割合を何らかのパーツに投じ、休日はツーリングへ。自動車雑誌やメディアに注目し、脳内には常にクルマのことを考えるための領域が確保されていた。知人友人と長い時間クルマのことを話しても尽きることがなかった。
Profileの欄に私はこう書いている。「・・・クルマ好きだと自他共に認めるところではありますが、クルマ趣味・クルマ道楽といった感覚はそれほど抱いていません」。
最近というよりも、ロードスターを降りて以来、PEUGEOT 405を得て以来、こんな感じが続いているのだ。前段に書いたような感覚からは遠ざかっている。
クルマへの情熱が冷めつつあるのかというと、決してそうではないのだが、ある種落ち着いていられるようになった(それを冷めたというのか?)のは確かである。ただ自身が持つ様々な興味関心の対象の中で、クルマへのプライオリティが相対的に下がっているのは確かである。例えば、いま自由に使える金額があったとして、それをクルマやクルマ関連に投じるかというと否である。いま自由に使える時間があったとして、すぐにでもクルマを走らせるかというと否である。常に頭のどこかでクルマのことを考えているかというと否である。つまりクルマ以外に、もっと興味や関心を注ぐものがあるということだ。それでも世間一般の感覚から見れば、十分にクルマ好きとみなされるのだろうが。
今、私のクルマとの付き合い方は、仕事用途と生活用途が大部分を占めていて、そこだけ見るならば、一般ユーザーと変わらない。たまたまクルマがPEUGEOT 208 XYというだけである。数年前までは、ある事情で片道1,000km以上のグランドツーリングに出かけることが年1回はあった。これは、その事情とやらに私個人の趣向を重ね合わせ、その行程を大いに楽しんでしまおうというもので、クルマ好き冥利に尽きるイベントであった。だが、ここ数年はそれも無くなっている。

私は仕事における時間の使い方を自分の裁量で自由に決定できる身分である。仕事の膠着あるいは突発的事情(その多くは単に今は気分が乗らないというものだが:笑)が発生した時、この裁量が生きてくる。いわゆる気分転換である。こういう時は、音楽を聴くとか映画を観るといったインドアな行動は効果的ではない。かといってスポーツやアウトドアに興じるには準備が整っていない。
そんな時は、すぐにクルマのキーを手に取るに限る。私の周辺には、短時間でグルっとクルマを走らせ帰還できるルートが、いくつかある。多くは都市郊外の田園風景を貫く道路であったり、畑作地帯の緩やかな起伏に沿って敷かれた道路であったりする。中にはワインディングとなっているルートもあって、そこではいかにもなクルマが水を得た魚のように走る光景が見られたりもする。

せいぜい1時間半もあれば戻って来られるルートが多いが、興が乗ると思いがけない方向にステアリングを切ってしまい、気づけばいくつかの自治体を通り抜け、県境付近まで辿り着くこともある。そうなると、これはもう半日コースへの突入であり、その日の仕事の進捗はほぼ諦めなくてはならない。「明日できることは明日やる」の格言が心強く思えてくる。

こういうお出かけも、あまり頻繁に行われるようでは、それは気分転換ではなく逃避になってしまう。かつてそういう日々に陥ることもあったけれど、最近は頻繁どころかめっきり少なくなっている。もはや気分転換すら必要ないとはその充実ぶりが喜ばしい、と言われそうだが、単にクルマを走らせる1時間半すら確保しにくくなっているだけなのである。まあ仕事に追われているという感覚も無いので、決して悲惨な状況ではないけれども。
そういうわけで、最近の話がほとんど出てこない当サイト(ブログ)なのである。